ググられる地図の正体

::地学教育に活用されるAR/VRたち(その4)::

AR Sandboxレビュー, 書評

社会学部で教えるようになってから、「社会学」そのものについて私自身勉強する日々が続いている。ウェーバーだのマルクスだのと、初学生に推薦されている必読書も学生達や他の教授陣との共通理解のために読んできたけれど、まだ自分の立ち位置について確定的な解を得ているわけではない。そんな中、おもわず飛びつきたくなった書籍がでた。「グーグルマップの社会学ーググられる地図の正体」(松岡慧祐著 光文社新書)がそれである。原稿や校務がたまっているというのに、一気に読んだ。

「一般図」は地図で「主題図」がマップ、とするグーグルマップ登場前夜までの状況分析、神の目を手に入れたにもかかわらず、もてはやされるのは「グールマップで君んちみつけた」と歌われてしまうような「ローカルなリアル化」の現象への指摘、行政境界の曖昧化など、なるほどこれが社会学か!と唸らされた。キーワード的に使われている「ジコチュー」や「エゴセントリック」という言葉が「ユビキタス・ネットワーク」系の業界では最近よく使われるようになっている、ということも、本書の周辺を見渡すようになって初めて気づいた。後半部は繰り返しが多かったりこなれていないところがあったりして半煮え的な所もあるように感じたが、迷える私にとってはなかなか刺激的で示唆的な新刊である。

Posted by T. Gaki